石見銀山で豊かな自然と町並みを撮ろう

カメラを持って緑と風と光を感じながら町を巡ると気持ちいい。
心動かされる場所で立ち止まりシャッターを切ろう。
 
 石見銀山はかつて銀の生産で栄えた町。2007年に世界遺産(文化遺産)に登録されて観光客が増えましたが、以後も観光地であって観光地でないような素朴さと居心地の良さを感じるのは、住民たちが基本ルールをつくり、自然環境や暮らしを守っているから。町を歩いてみれば、さりげなく覆われた自動販売機の木枠など、景観を配慮した試みに気づかされます。さてそんな石見銀山は、どこもかしこも写真を撮りたくなる景色ばかり。たっぷり写真を撮る時間を確保したいなら、貸自転車屋さんで電動自転車を借りるのがお勧めです。豊かな自然の中、光と風を感じて走るサイクリングは最高! 
 まずは石見銀山公園から銀生産の中心地だった銀山地区へ、龍源寺間歩に向かって自転車を走らせます。黄金色に実る稲穂や季節ごとに咲く草花、差し込む光の加減でガラッと表情を変える森林の風景もフォトジェニックです。約2.3㎞で間歩に到着し、拝観した後は元の道を戻って今度は町並みエリアへ。重要文化財の商家や武家屋敷、お土産屋さんやカフェにも立ち寄りましょう。階段を上った岩上にある観世音寺は、町並み保存地区に制定されている大森町の赤い瓦屋根が見渡せるフォトスポットなので見逃さないように。途中で出合うおばあちゃんやおじいちゃんに挨拶して町のことを訊いたり、カフェで一息ついたり。たっぷり、写真が撮れるはずです。
 
 
重要文化財・熊谷家住宅でひと休み。1輪の花と虎の組み合わせでかっこいい1枚に。
 
竹下錻力店の店先で写真撮影を楽しむおじさんと会話。旅は出合いが楽しい。
 
石見銀山資料館の前にある橋の上から銀山川を撮影。前ボケに少し色味のある草花を入れてアクセントに。
 
 

1【城上(きがみ)神社】

拝殿の鏡天井に描かれた極彩色の天井絵は圧巻。ルール通りひとりずつ絵の真下に立って手をたたくと、たたいた人にだけリンリンと音が聞こえます。竜の鳴き声のように聞こえることから、「鳴き龍」と呼ばれています。
 

2【観世音寺(かんぜおんじ)から見える町並み】

石段を登ると赤い門に仁王様がお出迎え。傍らには十六羅漢が並びます。町を見渡す眺望は最高ですが、慌てずに。アクセントになる郵便局の赤いポストと、通りすがる人のいい組み合わせを待ちながら撮影してみて。
 

3【羅漢寺五百羅漢(らかんじごひゃくらかん)】

銀山で働き亡くなった人々や祖先の霊を供養するために25年の時間をかけて1766年に完成。さまざまな表情の五百羅漢像は必ず誰かに似ていると言われている。石見銀山公園の近くにあるので参拝してでかけよう。大人500円。
 

4【豊栄(とよさか)神社】

毛利元就公が祀られた神社。お参りした後に振り返ると道にきれいな光が。枠の中に被写体を入れて画を引き締める効果を窓枠効果と呼びます。鳥居の中に入るいい被写体を待ち、シャッターチャンスをねらおう。
 

5【清水谷製錬所跡(しみずだにせいれんじょあと)】

清水寺前休憩所前の道を左に折れて坂道を上ると到着する清水谷製錬所跡。傾斜を利用して造られた明治時代の先端技術による製錬所の遺跡とのこと。明治28年から巨額を投じて建造されましたが、1年半で操業中止に。
 

6【佐毘売山(さひめやま)神社】

龍源寺間歩から約200mのところにあり、地元で「山神さん」と呼ばれ親しまれている神社。急こう配の長い階段を頑張って登ると、立派な境内が待ち構えています。
 

7【龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)】

江戸時代中期に代官所直営の間歩(銀を採掘した坑道)として創業されていた龍源寺間歩。600以上ある間歩の中で唯一常時公開されている場所です。坑道の壁面には当時のノミ跡がそのまま残っています。入場料大人410円。
 
 
photo: Yukikazu Ito 、Kiyoshi Nakamura(2)
 
 
 

石見銀山のおすすめスポット 

群言堂

全国の百貨店などに多数店を構えるアパレルブランド群言堂の本店が石見銀山に。築約150年の古民家を改装してつくられた空間でゆったりと服や雑貨、食品などの買い物や食事ができます。石見銀山の梅の花から発見された自然酵母「梅花酵母」を使用したスキンケア製品「MeDu(めづ)」にも注目。四季折々に変わる入り口のディスプレイや地元の鉄の彫刻家・吉田正純さんの作品を見るのも楽しい。大森町の豊かな生活を知り、お土産に持ち帰ろう。
 
季節の食材を使ったおむすび3種に、神西湖のしじみのお味噌汁、おからサラダなどのセット「里山おむすび」。
 
2階はギャラリー。取材時は不要品でつくられた椅子の展示「モッタイナイス」展が。
 
「MeDu」のパッケージは藤井保さん撮影。
 
無料冊子『三浦編集長』も手掛ける広報課の三浦類さん
 
大田市大森町ハ183
gungendo.co.jp
 
 

ベッカライ コンディトライ HIDAKA

古い町並みの中に現れる本格的なドイツパンの専門店HIDAKA。プレッツェルやひまわり種のフォルコンブロートなどスタンダードなドイツパンのほか、おすそ分けしてもらった野菜、漁師さんに頂いたわかめ、大森町内に植わっていた果物を所有者の方から譲り受けつくった新たなレシピのパンも。周りの人たちから可能性を引き出してもらえるのが嬉しい、とオーナーの日高さん。他では味わえないパンばかりで選ぶのに時間がかかります。
 
石見麦酒の黒ビールの酵母が使われたビアブロートなど、さまざまな種類のパンが並ぶ。遠方からわざわざ買いに来る人も。
 
オープンキッチンでお客さんとの会話が弾む。
 
出西窯とコラボしたブレッツェルのマーク入りお皿が買えるのはココだけ。
 
ドイツパンのマイスターを持つオーナーの日高さん
 
大田市大森町ハ90-1
 
 

カフェ・カリアーリ 石見銀山本店

1909年にイタリアのモデナで創業し、世界の著名人から愛されているコーヒー、カフェ・カリアーリの日本総輸入元が石見銀山に。日本に出店する際、いくつかの候補地の中から、すぐ様変わりする都会ではなく100年たっても変わらない町並みの石見銀山を気に入り、決めたそう。最高級の豆だけを8種類以上もブレンドしたコーヒーは、しっかりした味わいがありながらも、後味はすっきりと飲みやすい。本格的なコーヒーで疲れを癒そう。
 
店内のみで頂けるシェイカーでエスプレッソと氷を混ぜてつくるカフェシェケラート。泡から香りがふわっと広がりマイルドな味わい。
 
グランエスプレッソやグランカフェなどコーヒー粉をお土産に。
 
気さくなスタッフとの会話が楽しい。
 
地元出身のスタッフにコーヒーについて質問しよう
 
大田市大森町ハ46
www.caffecagliari.jp
 
 

和田珍味石見銀山店 理容館アラタ

大正末期から昭和初期に創業され、故荒田末市さん・トメヨさん夫妻が経営していた理容館アラタ。地元の企業和田珍味が「銀山ヴィレッジ」プロジェクトと名付け維持・保存に協力をしている。当時の理容道具や什器もディスプレイされ、なかでもアンティークな理容椅子はアールヌーボーのデザインが施され大正時代に流行した一品として、理容の歴史も物語っている。記念撮影もOKとのことなので、ぜひ立ち寄ってみて。
 
大田市大森町
wadachinmi.co.jp/honten/arata.html
※3月中旬まで冬季休業
 
 
 

<石見銀山豆知識>

なぜ石見銀山が世界遺産になったの?

石見銀山遺跡は、環境に配慮し、自然と共生した鉱山運営を行っていたことがとくに評価され、2007年7月に「石見銀山遺跡とその文化的景観」として、国内では14件目、鉱山遺跡としてはアジアではじめて世界遺産に登録されました。また、大航海時代の16世紀、石見銀山は日本の銀鉱山としてヨーロッパ人に唯一知られた存在でした。それは当時ヨーロッパで制作されたアジアや日本の地図に、石見銀山付近を指して「銀鉱山王国」「銀鉱山」と記されていることからわかります。「石見銀山世界遺産センター」を訪れて歴史を学んでから石見銀山に行けば、撮れる写真も変わってくるかも。
石見銀山世界遺産センターWebサイト
ginzan.city.ohda.lg.jp
 
 
photo: Kiyoshi Nakamura
 
 

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