カグラージョ座談会 石見神楽が好き!

石見神楽好きの女性たちで結成されたカグラージョ。
島根で暮らしているメンバー4名に集まっていただき、
石見神楽や石見地方の魅力を語ってもらいました!
 
 
左から花本彩子さん、岸本真樹さん、窪田真菜さん、佐々木奏絵さん。Facebookで募りメンバーは約40名。2015年には12名で写真展を開催。
photo:Yukikazu Ito
 
 
──まずは、石見神楽を好きになったきっかけから教えていただけますか。
花本 私は島根出身ですが、小さい頃は奉納神楽に行ってもいつの間にか寝てしまっていて。一度県外に出て、大人になって戻ってきてから伝統芸能のすごさに気づきました。太鼓や笛の音も好きですし、年配の方のゆったりとした舞もいいなと思います。
 
──窪田さんは温泉津舞子連中の神楽団にも所属されていますよね。
窪田 はい。きっかけは、京都造形芸術大学の在学中に授業で島根を訪れる機会があり、そのときに石見神楽の舞を見たことです。楽譜にはない変なリズム感とか、舞台芸術とは違う民俗芸能の魅力に惹かれて。東京生まれなので田舎にも憧れがあって、大学卒業後にこちらで就職をし、神楽団にも所属させてもらっています。
 
──岸本さんもⅠターンですか?
岸本 そうです。東日本大震災がきっかけで西の方で働こうと思っていたときに、たまたま江津市の仕事を紹介してもらって。江津は温泉津の隣町。もともと温泉好きで自分が気に入った温泉地の近くに住みたいという漠然とした思いもありました。石見神楽は子どもが好きなライダーマンショーの伝統芸能版くらいだと思っていたのですが、最初に住んだ江津の川平という人口2百人くらいの小さな村で見た秋祭りの「夜神楽」(奉納神楽)がカルチャーショックで。真夜中に酒やお重を手に村人たちが次々と集まり、たき火を焚いて神楽を観ながら思い思いの時間を過ごす。子どもは毛布にくるまって寝むたい目をこすりながら…何だろうこれは、とそのまま惹き込まれて朝まで見てしまいました。いちばん驚いたのは、近所のごくごく普通のおじさん達が、舞台の上では皆プロの演者だったこと(笑)。
 
──佐々木さんは、Uターンですよね。
佐々木 はい。弟が大の神楽好きで、私が小学校3年生くらいのときに一緒に「子ども神楽」に入りました。中学校になると神楽の熱は冷めたのですが、それから広島に引っ越しをして広島の神楽を見たら、「やっぱり神楽、いい!」と思って。2011年に島根に戻ってきたときに、また神楽熱が再燃しましたね。
 
──衣裳も豪華でかっこいいですよね。
窪田 そうですね。金糸で刺繍が施してあるものは、多分30㎏くらいあると思います。龍や獅子、ウサギなど動物の刺繍がとても重たいので、何匹入っているかにもよりますね。目もガラス玉で重たかったり。私は恵比須さんや姫さんの役なので、それほど重い衣裳は着ないのですが…。
岸本 まなちゃん(窪田さん)、重たい衣裳を着て、すごく飛ぶんです。めちゃめちゃかっこいいんですよ。
窪田 私はもともとダンスをやっていたので、伝統的な舞というより、自分らしさが満載かもしれません。はじめて見る人にすごい! って思ってもらって、石見神楽を好きになってくれるきっかけになると嬉しい。
 
──たくさん社中があると聞きましたが、好きな社中などありますか?
花本 私は西村神楽社中が好きです。同じ演目でも配役によって舞の雰囲気が変わるから、何回見ても新たな気持ちで観られる楽しさがあります。
佐々木 私は地元の人が多く所属する都治神楽社中が好きです。江津の神楽はたくさん見ていますが、どれも違ってすごく面白い。
窪田 神楽団の人たちは、身近なアイドルやヒーローのような存在なんですよね。子どもたちにとっては憧れの存在だし、同世代のおじいちゃん同士もあいつが頑張っているんだったらって見に行くんです。それが魅力ですね。
 
──最後に、石見神楽のある石見地方の魅力を教えてください!
岸本 自然にしても文化にしても、昔の日本人がずっと守ってきた「本物」が残っているということは、ふだんの生活のそこかしこに感じます。こういう時代だからこその安心感があるところが魅力なのかもしれません。
花本 私は桜が好きなのですが、益田や三隅のほうに樹齢6百〜7百年近くの大きい木があるんです。花が咲いている春だけではなくずっと生きている幹も見てほしいし、大事に守っている地域の方のことも知ってほしいですね。
佐々木 私はやりたいことが何でもできる環境や義理人情に厚く、仁義を尊ぶところです。神楽をやっている人も地元のおじさんも、こんなことをやりたいと言ったら、「やってみろ、やらしちゃるけ」と言ってくれて。やるとなれば応援してくれる。そういうところがすごく好きです。
窪田 田舎や自然は日本全国どこにでもあるけど、石見神楽は石見地域にしかない。神楽というものを守って伝え残している人がここにいることが素晴らしいし、私がここに居たいと思ったのは、日本人でよかったなと思えたから。それに、人によって価値観は違うと思うけど、私は満点の星空と蛍が見られるだけですごく幸せです。
 
 
石見神楽保存会 久城社中「道返し」/櫛代賀姫神社(久城神楽170周年祭)
撮影:佐々木奏絵さん
 
大都神楽団「羅生門」/ふれあいホールみと(年末太刀納神楽 玄武の舞)
撮影:佐々木奏絵さん
 
西村神楽社中「塵輪」
撮影:花本彩子さん
 
美川西神楽保存会「大蛇」
撮影:花本彩子さん
 
 

演目紹介

【恵比須(えびす)】

出雲の国美保神社の御祭神、恵比須様が磯辺で釣りをしている姿を舞ったもの。にこやかに鯛を釣る恵比須様の様子がコミカルで面白く、子どもたちにも人気の演目。鯛釣りの前の撒き餌と見立ててお客さんに福飴を撒く場面は、大人もつい手を伸ばしてキャッチしてしまいます。
 

【大蛇(おろち)】

高天原を追われた須佐之男命(すさのおのみこと)が出雲の国・斐の川(ひのかわ)にさしかかると、嘆き悲しむ老夫婦と稲田姫(いなだひめ)に出合う。毎年八岐大蛇が現れ、すでに7人の娘がさらわれたという。そこで須佐之男命が大蛇に毒酒を飲ませ酔っぱらったところを退治。最後は稲田姫と結ばれるストーリー。
 

【頼政(よりまさ)】

平安時代末期、毎夜丑の刻になるとヒョーヒョーと気味の悪い唸りと共に、東三条の森から黒雲がわき出て、帝の寝所である清涼殿(せいりょうでん)を黒く覆ってしまいます。鵺(ぬえ)という怪物の仕業です。そんな鵺を退治するため、頼政は家来を連れて森へ。途中、いたずらをする猿が登場し、客席に乱入することも! 楽しい演目です。
 

【岩戸(いわと)】

天照大御神(あまてらすおおみかみ)が弟・須佐之男命(すさのおのみこと)の乱暴に困って岩戸に隠れます。世の中すべてが闇夜となり、多くの災いが起こるように。そこで神々が天(あめ)の宇津女命(うずめのみこと)を呼んでおどらせ、長鳴鳥を鳴かせて大御神の気を引き、そのまま迎えだすことに成功。再び世の中は平和になりました。
 
参考:「石見神楽 演目紹介」(発行:石見観光振興協議会)
 
 
焦点距離24㎜/f3.2/1/60秒/ISO1000/露出補正−1.3
photo:Yukikazu Ito
 
 

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