5.マムアンの作者 タムくんに会いに
マムアンの作者タムくんに会いに
タイの漫画家、ウィスット・ポンニミットさんことタムくんを訪ねて、
バンコク郊外にあるアトリエヘ。
旅のことやマムアンちゃんのこと、訊いてきました。
タムさんが描く愛らしい女の子のマムアンちゃんを、どこかで見たことがある人も多いのでは?
その絵と言葉は、展覧会や雑誌、書籍などだけではなく、SNSでも発信されています。
1998年に漫画家としてデビューしたタムさんは、2003年から3年間、神戸で活動していました。現在はバンコクを拠点にアーティスト・漫画家として作品制作の傍ら、アニメーション制作・音楽活動など多方面で活躍しています。
日々忙しいタムさんですが、旅に出ることもあるのでしょうか?
「去年の12月、トラート県のコ・クット(クット島)に出掛けました。すごく楽しかったです。小さい頃に訪れたこともあったのですが、その時にはわからなかった魅力が大人になってわかるようになりました。空気は違うし、自然も素晴らしい。いろんな国からタイに観光客が来ているのはなぜだろうって思っていましたが、ちょっとわかりましたね。ピンクの睡蓮の花(ウドーンターニー県クンパワピー郡)なども見に行きたいんです」。
タムさんが描くマムアンは、見る人を励まして、優しい気づきをもたらしてくれるものばかり。これらの作品はどんなときに生まれてくるのでしょう。
「インスタグラムなどに載せているものは、なにか言いたいことがあるときに描いています。〝ポスト〟みたいなもの。つぶやきって感じですね」。
言いたいことは、ポジティブじゃないことだってあるのでは?
「でも、何か困ったときに、『困った!』ってつぶやいても、書いた言葉を見てもっと困ってしまう。たとえば、危ない運転をしている人に、車の中で『バカヤロー』って言ったとしても、相手には聞こえていなくて、聞くのは自分だから、もっとマイナスになっちゃう。だから、言うならちょっと解決してから音にしようって。音ってバイブレーションだから、せっかく出すならいいバイブレーションを出して、自分をチューニングする。時間が掛かるけどね。解決してから、描くようにしているんです」
マムアンを描き始めて15年というタムさん。もやもやしたとき、立ち止まったときに、マムアンの言葉と絵は、きっと力になってくれます。
バンコク中心地以外で「余裕」を感じて
日本から友達が遊びに来ときは、バンコクから少し離れた自宅に泊まってもらい、近所に出掛けることが多いというタムさん。「バンコクの中心地は渋滞しているし、お店も混んでいる。ちょっと離れていても、昔から長く続いていて、味も値段も変わらないおいしいお店はありますよ」。
ウィスット・ポンニミット(タムくん)
1976年、タイ・バンコク生まれ。バンコク、シラパコーン大学デコラティブアート学部卒。主な作品に「マムアン」シリーズ、『ブランコ』(小学館)、『ヒーシーイット』シリーズ(ナナロク社)など。くるりの楽曲「琥珀色の街、上海蟹の朝」PV制作を手掛けたほか、さいたまトリエンナーレ2016にも参加。
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