日本一美しい星空が見える鳥取県。神秘的な、夜の砂丘へ。

~大賞は星の命名権!星取県フォトコンテスト開催中!~

 

鳥取県は、県内各地で「天の川」が見え、また「流れ星」も見えやすく、全国星空継続観察(※数値的に星空の美しさを表す指標)で何度も日本一になった「美しい」星空が見える県だとご存知でしたか。鳥取県は「星取県」と改名し、星空のフォトコンテストを開催しています。

このフォトコンテストは大賞の賞品がとってもユニーク。なんと「星の命名権」が貰えるんです! 夜空に輝く星は無数にあり、そのすべてに名前が付いているわけではありません。

その名前がない星のひとつに、好きな名前を付けることができるんです(なんてロマンチック!)。自分や家族やペットの名まえを付けたり、誕生日のサプライズプレゼントにすることも…。

そんなフォトコンテスト募集のお知らせを聞いて思い出したのは、「Have a nice PHOTO!」Vol.8の特集で、鳥取砂丘に星撮影の旅に出かけたこと。鳥取県が「星取県」に改名したのは納得で、砂丘の頭上に広がる星空は、息をのむほどの美しさでした。

撮影を担当した写真家の伊藤之一さんと取材時のことを振り返りながら、皆さんがこの夏、すぐに実践できる星空撮影のコツをご紹介します。

 

――鳥取砂丘に行ったのは、2年前でしたね。あの時、伊藤さんは久しぶりの星撮影だとおっしゃっていました。

伊藤 そうです。中学2年生のとき以来。「彗星が来る」というニュースを見て、友達数人とどこかのアパートの屋上に上がって星を撮りに行ったんです。おじいちゃんに貸してもらった、50㎜f1.4のレンズを持って。フィルムカメラだったし、あてずっぽうでシャッターを押していたので、1枚もちゃんと撮れなかったのですが(笑)、みんなで寝転んで星を見たり、あれはあれで楽しかったですね。

 

――当時に比べたら、「どう写るか」が分かるデジタルカメラは、ずいぶん、撮りやすくなりましたよね。

伊藤 そうですね。誰でも簡単に撮れるようになりました。撮る場所は、明かりが少ない場所で、満月じゃない夜がいいと思います。

その点、鳥取砂丘は人工灯がなく真っ暗で、星を撮影するには適した場所。三日月の日だったので、月明かりにもそれほど影響されませんでした。

 

――確か、砂丘に着いたのは21時頃。すごく暗かったですよね。ヘッドライトを付けても怖いくらいの暗闇のなかを、ざくざくと進んで。どこか別の惑星に来たような、神秘的な感じがしました。

伊藤 それに加えて、写真家の植田正治さん(※1)のホリゾント(※2)に入れていただくような、神聖な雰囲気がありました。1歩踏み出す前に砂丘の前で一礼したのを覚えています。「撮らせていただきます」というような気持ちになって。

(※1)世界的に有名な鳥取出身の写真家。生涯、故郷をはなれず、作品を作り続けた。鳥取砂丘で撮影した作品も多数残されている。(※2)スタジオの撮影などで使われる背景のこと

 

――ちょうど梅雨に入ったくらいの6月上旬でしたが、この日は奇跡的に晴れてくれて。鳥取の冬や梅雨時期は、晴天率が低いけれど、その晴れ間や快晴の日は、息をのむほどの美しい星空が見られるそうです。

伊藤 この日も風が強かったからか、空気が澄んでいましたね。月明かりと、漁火の光だけだったので、星を撮るには最高のシチュエーションでした。

 

――馬の背(※3)を登り切って、砂まみれになりながら最初に写した1枚が、表紙になったこの写真です。

(※3)「馬の背」のように見える砂の山

焦点距離14㎜/f6.3/66.2秒/ISO1600

――海を見つめている人がいましたね。

伊藤 ことのほか砂丘に人がいたのが、驚いたというか、助かったというか。デジタルカメラがあれば、星は意外に簡単に撮れるので、いい星空の写真を撮るには、星とどんな人や風景と組み合わせるかがポイントになってきます。

 

――次の写真はイカ釣り漁船の漁火と一緒に撮影した写真ですね。円を描く星の写真は、露光時間が長いので、シャッターを押したら、しばらく待つだけっていう…。自動販売機すら近くになくて、やることがないから、ただ海を眺めていましたね。寒くなったら、わけもなく走り出したりして(笑)。

焦点距離14㎜/f22/3060秒/ISO64

伊藤 なんていうか、贅沢ですよね。1~2時間かけて、写り込む時間、待つ。久しぶりに星を撮ってみて、単純に、楽しいものだなあ…と。この写真のように円を描く星を撮るときは、まず真北にある北極星を見つけます。アプリや星座板、方位磁針を使って。その北極星を画面のどこに配置するか決めて長時間露光すれば、北極星を中心に円を描くように星が写ります。

 

――「オアシス」と呼ばれる雨水(砂丘に振った雨や雪がたまって溢れだした湧き水)とも一緒に撮りましたね。月の明かりで空が明るくなっているのが分かります。

焦点距離21㎜/f8/750秒/ISO1600

――スタッフや、たまたま散歩に来ていた人たちが、iPhoneで照らして砂丘を歩く道筋も、少し露光すればこの通り。

焦点距離21㎜/f6.3/137秒/ISO1600

焦点距離21㎜/f6.3/72.6秒/ISO1600

――スタッフには、「歩いて」、「止まって」、「消して」と大声で指示をしながら撮影しましたね。歩いた道筋が光の道となって、人はまるで魂のような形に見えます。

伊藤 私たちがiPhoneを持っている「今」なんて、何億光年も前に誕生した夜空の星に比べたら、ほんのわずか一瞬のこと。その対比が面白いんじゃないかなと思って、星とiPhoneの光を一緒に写したんです。この時は、どんな星座が写っているのか、名前も全く知らずに撮りましたが、きっと知って撮ったらまた違う写真が撮れるかもしれませんね。たとえばその星に関連のあるものと一緒に撮るとか…。

 

――鳥取で星を撮るなら、他にどんなところで撮影されたいですか。

伊藤 大山はもちろん、瓦屋根の街並みとの組み合わせもいいですね。鳥取に行ったのはこの時が初めてでしたが、穏やかで優しい風景が好きでした。ぽっかり雲が浮かんでいる、それだけでシャッターを切りたくなるような。次、鳥取に行ったら、また違う写真が撮れそうで楽しみです。

 

「星取県」による星空のフォトコンテストは、8月31日(木)まで写真を募集中。この夏、鳥取県に遊びに行って、「星と鳥取県の風景」部門に応募しよう! 8月中には行けない!という人は、「こんなの撮れまスター」部門にご応募ください。応募作品はWebサイトで見ることができます。

→→→ https://www.smartcross.jp/hoshitoriken/

 

★この夏、星撮影に挑戦して、
「星取県」の星空のフォトコンテストに応募しよう!

  • 機材

カメラ

バルブ撮影、もしくはマニュアル撮影できるカメラであれば、コンパクトカメラでもOK。撮像素子の大きいカメラがあれば、ISO感度を高く設定してもノイズを抑えた写真が撮れます。

レンズ

レンズのF値は数値が小さいものほど暗い場所を撮るのに適しています。F2.8などなるべく明るいレンズがお勧めです。ダイナミックな風景を撮りたいときは、広角レンズと呼ばれるmm数の小さなレンズを使うのがいいでしょう。

レリーズ、三脚、予備バッテリー etc.

長時間露光では、撮影者がシャッターボタンに直接触れるとその振動でブレてしまうため、遠隔操作できるレリーズがあると便利。三脚は、旅先で使うなら、少し高くても軽量でしっかりしたカーボン製の三脚がお勧めです。途中で電池が切れて困らないように、予備バッテリーも忘れないようにしましょう。また、月の満ち欠けや位置が分かるアプリ「Moon Seeker」もあると便利です。

  • 基本の撮り方

点で写す

ISO1600以上/絞りF2.8/シャッタースピード30秒

カメラをマニュアルモードにして、上記設定を目安に合わせます。ピントは、一番遠いところに合う「無限遠∞」に合わせましょう。細かな数値設定は周辺の明るさによって変わるので、一度撮ってみて調整しましょう。

線で写す

ISO100/絞りF4/長時間露光10分~2時間

星が動く様子を撮るには、露光時間を長くします。短い線であれば、10~12分程度。円なら、北極星の位置の見当をつけて、構図を決め、1~2時間程度露光。

  • 環境

周辺の明かりが少ない場所で、満月の日を避けましょう。新月や三日月の日がお勧めです。

 

 

「星取県」プロジェクト フォトコンテスト

~8月31日(木)まで

www.smartcross.jp/hoshitoriken

「星と鳥取県の風景」部門

星のある風景写真。風景は鳥取県内の風景に限ります。

「こんなの撮れまスター」部門

鳥取県内外を問いません。夜景もOK。

賞 : 両テーマの中から次の賞を選定します。

 

  • 大賞(1名)

3万円+スターネーミングギフト(星に好きな名前をつけることができます)

  • 優秀賞(2名)

賞金1万円

  • 星取県スター大使特別賞(1名)

賞金 3万円+星取県スター大使デザインの賞状を贈呈します。

 

<プロフィール>

伊藤之一 (いとう ゆきかず)

1966年愛知県生まれ。1991年日本大学芸術学部写真学科卒業後、(株)博報堂フォトクリエイティブを経て独立。JR東日本や王子ネピア、日本コカ・コーラなど、さまざまな広告写真を手掛ける。写真集に『入り口』、『凸』、『under glass』など。

www.itoyukikazu.com

 

 

TEXT:Nahoko Ando(Have a nice PHOTO!)